
大きな地震が発生すると、私たちの注意はまず「揺れ」そのものに向きます。
しかし、過去の震災では、揺れが収まった後に発生した“火災”が甚大な被害をもたらしました。
特に現代の住宅は電化製品が多く、停電からの復旧時に起きる「通電火災」が大きな割合を占めています。
消防庁の統計でも、電気を原因とする火災は年間6,000件前後と高い水準で推移しており、地震時にはそのリスクがさらに高まります。
地震そのものだけでなく、その後に起こり得る火災を理解し、事前の備えと地震の際の行動を整えておくことが、命と生活を守る鍵になります。

1. 地震で火災はなぜ起きるのか
地震火災は「揺れ → 破損 → 可燃物接触 → 発火」という連鎖で発生します。
主な原因は次の5つです。
通電火災(最も多い)
停電 → 復旧時の再通電で発火する現象です。
倒れた家具に押しつぶされて損傷したコードがショートしたり、落下した衣類がヒーターに触れたまま再通電したりすることで発熱 → 発火が起きます。電気火災は平常時でも年間6,000件前後発生しており、地震時にはそのリスクが一気に高まります。

[図 通電火災]
「北陸電力送配電 非常災害時への対応」から抜粋
漏電・配線損傷
揺れでコードが引っ張られたり、家具に挟まれたりして損傷し、ショートして発火するケース。
能登半島地震・輪島朝市では「地震の影響により電気に起因した火災が発生した可能性が考えられる」(消防庁)とされています。
その後、木造建物密集地域であったこと、ガスボンベの爆発、道路閉塞や津波警報による消防活動の困難さが重なり、延焼が拡大しました。
ガス・石油機器の破損
石油ストーブの転倒、ガス配管の破損、プロパンガスボンベの転倒などが引火源になります。
家屋倒壊による出火
倒壊した住宅内部で電気機器やガス機器が破損し、火災につながるケース。
津波火災
東日本大震災では、津波によって可燃物や燃料が流され、広範囲で火災が発生しました。
2. 火災を防ぐための事前対策
感震ブレーカーの導入(最重要)
地震後の火災の多くは通電火災であり、そのリスクを大幅に下げるのが感震ブレーカーです。
主な種類
- 分電盤タイプ:最も確実。揺れを感知して家全体の電気を遮断。
(高齢者世帯や在宅時間が不規則な家庭に最適) - 感震リレータイプ:既存の分電盤に後付けできる。
- コンセントタイプ:電熱器具だけを選択的に遮断。
- 簡易タイプ(アイデア商品):重りと紐でブレーカーを物理的に落とす。安価で賃貸でも導入しやすい。

[図 感電ブレーカー]
内閣府、消防庁、経済産業省「地震による電気火災対策を!」から抜粋
家具固定・家電の転倒防止
配線損傷や可燃物接触を防ぐためにも重要。
暖房器具の周囲に物を置かない
落下物がヒーターに触れて発火する事故を防ぐ。
ガス機器・石油ストーブの点検
古い機器は破損しやすいため、定期的な点検が必要。
消火器の設置と使用方法の確認
家庭用消火器は「玄関とキッチンに1本ずつ」が基本。
キッチン用は油火災にも対応しているものが望ましいです。
家庭でできる簡易チェックリスト
☐ブレーカーの位置を家族全員が知っている
☐消火器の場所と使い方を確認した
☐暖房器具の周囲に可燃物がない
☐家具の固定を見直した
☐感震ブレーカーの導入を検討した
3. 地震直後に行うべき行動
揺れが収まったら火気を確認
ガスコンロ、ストーブ、オーブンなどをすぐにチェック。
停電している場合はブレーカーを落とす
復旧時の通電火災を防ぐために必須。
ガスの元栓を閉める
都市ガスは自動遮断されることが多いが、念のため確認。
家族で役割分担
「火気確認」「ブレーカー」「119番通報」などを分担すると混乱を防げます。
4. 初期消火 ― 誰でもできる具体的な方法
初期消火は、火が小さいうちにしか成功しません。
判断と行動は10秒以内が理想です。
まず火の大きさを判断
- 炎が天井に届く → 初期消火は不可能。すぐ避難。
- 炎が30cmくらいまで → 初期消火のチャンスあり。
消火器の使い方(P.A.S.S.)
- P:ピンを抜く
- A:ホースを構える
- S:レバーを握る
- S:左右に掃くように噴射
噴射時間は短いため(住宅用は10~15秒が多い)、火元を狙って消火します。


[写真・図 東京消防庁]
逃げる判断基準
煙が充満し始めたら、火が小さくても無理をせず避難することが最優先です。
状況別の具体的な消火
- コンロ火災:鍋のフタをかぶせる。油には水をかけない。
- 電気火災:電源を切り、消火器で対応。水は厳禁。
- 布類の火災:カーテンは根元を切り落とし(引っ張って落とし)て床で消火。
- ゴミ箱火災:水でOK。プラスチックが溶けている場合は消火器。
覚えておくこと
- 出入り口を背後にして、避難路を確保する。
- 姿勢を低くし、煙を吸い込まないようにする。
- 炎ではなく、火元を掃くように左右にふる。
- ホースが強く振られるので、ノズルをしっかり握る。
- 消火器の薬剤は全て出し切る。
- 粉末消火剤の場合、必ず消火を確認する
5. まとめ
地震火災は「揺れが収まった後」に起こることが多く、特に通電火災は現代住宅の大きなリスクです。
感震ブレーカーの導入、家具固定、火気確認などの事前・直後対策を徹底することで、火災の発生を大幅に減らせます。
また、初期消火は“10秒の判断”と“15秒の勝負”(注)ともいわれます。
無理をせず、命を最優先に行動することが重要です。
(注)住宅用消火器の多くは消火時間は10秒~15秒ですが、タイプによっては異なるため製品の説明書を事前に確認してください。
消棒Rescue®は、国家規格JIS D5716を取得した自動車緊急脱出支援用具(シートベルト切断機能、ドアガラス破砕機能)ですが、CO2消火機能も備えており、卓上ホルダーを装着すれば家庭やオフィスの初期消火用の消火具として活用することができます。
CO2(二酸化炭素)による消火のため、電気火災の他、パソコンなどの電子機器を汚さず消火することができます。


