
旧車やクラシックカーは、現代車にはない造形美や素朴な機械的フィーリング、そして希少性ゆえの特別感から、多くの愛好家を惹きつけています。電子制御が少ないぶん、運転の手応えがダイレクトで、手をかけた分だけ応えてくれる“相棒”のような魅力もあります。しかしその一方で、経年劣化した燃料ホースや配線、キャブレターの構造など、現代車にはない火災リスクを抱えているのも事実です。実際、旧車の火災は整備状態や素材の老朽化が重なって発生するケースが少なくありません。本稿では、こうした旧車特有の火災リスクを整理し、どのような点に注意すべきか、そして万が一に備えるための対策について解説します。大切な一台を長く、安全に楽しむための一助となれば幸いです。なお、本稿では、クラシックカーを含め車齢の高い車両を総称して「旧車」と呼びます。
目次
1.車両火災の現状
消防白書(令和7年版)では、車両火災の件数や原因を発表しています。ただし、ここでは車種や年式は分類されないため、旧車を含むすべての車両が含まれています。以下引用します。
「令和6年中の車両火災の出火件数は3,546件(対前年比25件増)、死者数は74人(放火自殺者等38人を含む。同31人減)、損害額(車両火災以外の火災種別に分類している車両被害は除く。)は24億5,415万円(同1億2,157万円増)となっている(資料1-1-47)。
車両火災の出火件数を原因別にみると、排気管によるものが636件(全体の17.9%)と最も多く、次いで電気機器が316件(同8.9%)、交通機関内配線が311件(同8.8%)の順となっている(資料1-1-48)」

2.旧車の主要な火災原因と対策
旧車の場合の火災の原因となるリスクが高い項目と対策を以下の表にまとめました。なお、これらは一般的な内容であり、車種や年式、また使用状況によっては違いがあり得ますので、ご自分の車の構造や状態を確認しながら対策を検討してください。

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火災原因(旧車特有) |
予防対策 |
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燃料ホース・ガスケットの劣化 旧車では、燃料ホースやガスケットが経年で硬化・ひび割れを起こし、ガソリンが“にじむ”ように漏れることがあります。キャブ車は燃圧が低いため漏れが目立ちにくく、排気系の高温部に触れて発火する危険があります。 |
燃料ホース・ガスケット類は外観に問題がなくても年数で交換し、耐燃料性の高い素材へ更新することが重要です。 |
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キャブレターのオーバーフロー フロートバルブの摩耗やニードル固着により、キャブ内部の燃料が止まらず溢れ出すことがあります。溢れたガソリンが外部に垂れ、始動時のバックファイヤーで引火する事例も報告されています。 |
キャブレターは定期的にオーバーホールし、フロートバルブやニードルを予防交換することでオーバーフローを防ぎます。 |
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電装系の老朽化 旧車の配線は布巻きや古いビニール被覆が使われており、熱や振動で絶縁が弱くなりショートを起こしやすい構造です。後付け電装品の配線不良も火災の一因となります。 |
エンジンルーム内の配線を点検し、劣化が見られる場合は引き直しを行います。ヒューズ容量の適正化やアースポイントの見直しも有効です。 |
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オイル漏れ・ブローバイの吹き返し シール類の劣化によりオイルが滲み、排気マニホールドなどの高温部に付着すると発火の危険があります。ブローバイの吹き返しによるオイルミストの付着も同様にリスクとなります。 |
オイル漏れは“にじみ”の段階で修理し、PCV系統の清掃やホース類の点検を定期的に行います。 |
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排気系の高温部への可燃物接触 断熱材の劣化や落下、オイル滴下などにより、排気系の高温部に可燃物が触れると発火につながります。 |
断熱材の交換や遮熱対策を施し、排気周 りの清掃を定期的に行うことが重要です。 |
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後付けパーツの取り付け不良 電装品や燃料系パーツの追加が多い旧車では、取り付け不良や配線の固定不足が火災の原因となることがあります。 |
後付けパーツは専門業者による施工を基本とし、配線の固定や保護チューブの使用を徹底します。 |
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長期保管による劣化 長期間動かさない車両では、ガソリンの腐敗やゴム部品の硬化、内部の錆が進行し、火災リスクが高まります。 |
保管前後の燃料系清掃や添加剤の使用、始動前の点検を徹底します。 |
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初期消火が遅れる 旧車は可燃物が多く、一度火が広がると短時間で延焼します。初期消火が遅れると車両全損に至ることもあります。 |
車載用消火器具を常備し、運転席からすぐ手が届く位置に設置することが重要です。 |
3.もし火災が起きたら
旧車は構造上、ひとたび火が出ると短時間で燃え広がる傾向があります。万が一、走行中や始動時に異常を感じた場合は、落ち着いて次の点に留意しながら行動してください。
異臭・白煙・にじみを感じた時点で停止する
焦げたような匂い、ガソリン臭、白煙などの異常を感じたら、火が見えていなくてもすぐに安全な場所へ停車します。旧車の場合、にじみ程度の燃料やオイルが高温部に触れて発火することがあるため、早めの判断が重要です。
小規模の火災であれば初期消火を試みる
火がまだ小さく、エンジンルームの一部でくすぶっている段階であれば、車載用消火具を使って初期消火を試みます。
- ボンネットは一気に開けず、隙間から噴射する。ボンネットを大きく開けると酸素が一気に入り、炎が急拡大する危険があります
- 風上から消火剤をかける
- 火元に向けて短く断続的に噴射する
なお、当社製品「消棒Rescue®」を使用した初期消火の様子は、以下の動画で確認できます。
https://www.youtube.com/watch?v=VNvGMNSnNHQ&t=165s (1分33秒から約1分間)
ガソリンに引火した場合は消火をあきらめる
ガソリンが燃えている場合、炎の勢いが非常に強く、携帯用消火具では消し止められないことが多いため、無理に近づくのは危険です。
- 炎が立ち上がっている
- バチバチと音がしている
- 周囲に燃え移り始めている
このような状態になったら、消火はあきらめてすぐに離れます。命を守る判断が最優先です。
引火しそうな状況でも無理はしない
燃料が滴下している、煙が勢いを増しているなど、「このままでは火がつく」と判断できる状況では、消火具を持っていても無理に近づかないことが大切です。旧車は可燃物が多く、状況が一変することがあります。
安全な距離まで避難し、119番通報する
消火を断念した場合は、車から十分に離れた場所へ避難し、119番通報します。
- 車両から最低でも10〜20m以上離れる
- 風下には立たない
- 周囲の人にも離れるよう声をかける
ガソリンタンクが破裂する可能性もあるため、距離を取ることが重要です。
4.消棒Rescue®の特徴「自車だけでなく他車も助ける社会貢献ツール」
ワイピーシステムの消棒Rescue®は、「割る」=ドアガラス破砕、「切る」=シートベルト切断、「消す」=二酸化炭素による消火の3機能を備えた自動車緊急脱出支援ツールです。
「割る」「切る」については、国家規格 JIS D5716 の認証商品であり、交通事故や水没事故など、いざというときに安心して使えます。
「消す」については、一般的な消火器より軽量・コンパクトで使いやすいという特長があります。また、消火剤が二酸化炭素のため、消火後に粉や泡が残りません。
ドアポケットなどに備えておき、いざというときにすぐ使えるようにしておいてください。自分の車だけでなく、他の車の危機にも使える社会貢献ツールです。




