
11月9日から15日まで「秋季全国火災予防運動」が実施されています。各地の消防本部や消防団は、住宅用火災警報器の点検促進、高齢者世帯への防火訪問、消防車による巡回広報などを行います。また、地域の実情に応じて、林野火災や野外での火の取り扱いに対する注意喚起も行われています。
秋から冬にかけて火災が増加する背景には、暖房器具など火を使用する機会が増えることに加え、地域によっては降水量が減少し、空気や可燃物が乾燥することなどが挙げられます。
本稿では、乾燥と火災の関係を東京(東京消防庁管内)と全国の傾向を比較しながら掘り下げてみようと思います。
資料:総務省消防庁、東京消防庁及び気象庁の公表資料を基に作成
1 全国の火災件数(月別)と東京の火災件数(月別)の比較
2022~2024年の3年間の月別平均火災件数を比較すると、全国では冬から春にかけて火災が多く、3月にピークを迎えています。一方、東京消防庁管内では秋から冬にかけて増加し、12月にピークを迎えています。両者には、火災件数の季節変化に違いが見られます。

2 東京はなぜ10月から火災件数が増えるのか
下のグラフ(東京都月別降水量 2022年~2024年3か年平均)からわかるように、東京では、11月から翌年2月にかけて降水量が少なくなる傾向があります。これは、冬型の気圧配置のもとで、太平洋側では晴天の日が多くなることなどが関係しています。

東京では、冬になると気温が下がり、相対湿度も低くなる傾向があります。また、気温の低下に伴って、空気中に含まれる水蒸気量(絶対湿度)も夏に比べて大幅に少なくなります。下表は東京都の月別火災件数(グレーの棒グラフ)、相対湿度(いわゆる「湿度(%)」、ブルーの折れ線)、平均気温(赤の折れ線)及び絶対湿度(緑の折れ線、1m³に含まれる水蒸気量(g))を示したものです。11月~翌2月までに絶対湿度がかなり下がっていることが分かります。

降水量が少なく、相対湿度の低い日が続くと、木材や紙などの可燃物が乾燥しやすくなります。乾燥した可燃物は着火しやすく、いったん火災が発生すると燃え広がる危険性も高まります。東京では、こうした乾燥した気象条件に加え、暖房器具の使用など生活環境の変化も、冬季の火災リスクに関係していると考えられます。
3 東京都は建物火災の割合が多い
下表に示すとおり、東京消防庁管内では、全国と比較して建物火災の割合が高くなっています。2022~2024年の3年間では、全国の約55%に対し、東京消防庁管内では約72%を占めています。
これは、東京では建物が密集し、全国と比較して林野火災などの割合が小さいことも関係していると考えられます。
一方、全国では、冬から春にかけて林野火災が多く発生します。この時期は、枯れ草や落ち葉が蓄積し、乾燥や強風によって火が燃え広がりやすくなるほか、農作業に伴う火入れやたき火など、人為的な要因も関係しています。
こうした林野火災の季節的な増加も、全国の春季の火災件数に影響を与えていると考えられます。
表・火災件数に占める建物火災の割合
| 年 | 全国 | 東京 |
|---|---|---|
| 2022年 | 55.5% | 72.1% |
| 2023年 | 54.2% | 70.6% |
| 2024年 | 56.5% | 72.7% |
| 3年間平均 | 55.4% | 71.8% |
4 空気乾燥の兆候に気を付けて
空気が乾燥すると、唇や手指がカサつく、喉がイガイガする、衣服を脱ぐときに静電気が発生するなど、身体や身の回りにも変化が現れます。
また、雨の少ない日が続くと、庭の落ち葉や枯れ草、木材なども次第に水分を失い、燃えやすい状態になります。
特に、乾燥した日が続き、風も強いときは、いったん火災が発生すると燃え広がる危険性が高まります。
身近な乾燥のサインに気付いたら、気象情報や乾燥注意報にも目を向け、いつも以上に火の取り扱いに注意しましょう。

5 空気乾燥に伴う健康管理も大切に
空気の乾燥は、火災の危険性だけでなく、私たちの身体にもさまざまな影響を及ぼします。
① 肌の乾燥
冬は空気中の水蒸気量が少なく、暖房によって室内の相対湿度が低下すると、皮膚から水分が失われやすくなります。その結果、肌のカサつき、かゆみ、ひび割れなどが起こりやすくなります。
② 喉や鼻の粘膜の乾燥
乾燥した空気を吸い込むと、鼻や喉の粘膜が乾燥しやすくなります。粘膜の乾燥は、異物や病原体を排除する働き(粘液や線毛による防御機能)を低下させる要因となります。
③ ウイルス感染への影響
インフルエンザウイルスなど、一部の呼吸器ウイルスは、低温・低湿度の環境で感染が広がりやすくなることが知られています。ただし、湿度の影響はウイルスの種類によって異なり、感染の広がりは人との接触や換気など、さまざまな条件にも左右されます。
暖房を使用する際は、適切な加湿と換気を心がけ、肌や喉の乾燥にも注意しましょう。




