
8月中旬の千葉県を襲った豪雨では、千葉市だけでも2,700台以上の車両が動かなくなり、県内では浸水した車内に取り残されるなどして4人が亡くなられました。また、9月7日には福島県のアンダーパスで車2台が水没し、うち1台に取り残された女性が救助されましたが、その後亡くなられました。さかのぼれば2019年に東日本各地で大規模な浸水被害をもたらした台風19号でも多くの方が車での移動中に被災しました。
豪雨による道路冠水や車両の水没は、決して珍しい災害ではありません。こうした中、万一車内に閉じ込められた場合に、窓ガラスを破砕して脱出するための「脱出ハンマー」の必要性も徐々に認知されるようになっています。
しかし、脱出ハンマーは、単に車に積んでおけばよいというものではありません。いざというときに手が届く場所にあり、正しい方法ですぐに使えることが重要です。
本稿では、脱出ハンマーの種類や使い方、車内での配備方法、使用する際の注意点について解説します。
1.脱出ハンマーの種類と使い方
脱出ハンマーには、大きく分けて「金づちタイプ」「ピックタイプ」「ポンチタイプ」があります。形状によって握り方やガラスの破砕方法が異なるため、購入した製品の使用方法をあらかじめ確認しておくことが大切です。
① 金づちタイプ
金づちのようにグリップを握り、先端部をドアガラスなどに打ち付けて破砕します。シートベルトカッターと一体になった製品も多く販売されています。
② ピックタイプ
アイスピックのように握り、先端をガラスに叩き付けて破砕します。コンパクトなものや、消火具・発炎筒など他の車載用品と一体になった製品もあります。
③ ポンチタイプ
先端をガラスに押し当てることで内部の機構が作動し、突起物が飛び出してガラスを破砕するタイプです。金づちタイプやピックタイプのように腕を振って打ち付ける必要がありません。
(令和2年 国民生活センター報道資料「自動車用緊急脱出ハンマーによるガラスの破砕 ―万が一の水没事故に備えましょう―」より)
2.脱出ハンマーは「どこに置くか」が重要
① シートベルトを装着したまま手が届く場所に
事故や水没時には、車体の変形や水圧などによってドアが開かなくなる可能性があります。また、シートベルトが外れず、自由に動けないことも考えられます。
そのため、脱出ハンマーは運転席に座り、シートベルトを装着した状態でも手が届く場所に設置することが重要です。
② 車内で動かないように固定する
ドアポケットやセンターコンソールなどに置いているだけでは、衝突や車両の傾きなどによって、脱出ハンマーが外れたり、移動してしまう可能性があります。走行中や事故時に散逸しない、必要なときにはすぐ取り外せる状態にあることが大切です。
③ 子供が簡単に取り出せないようにする
脱出ハンマーはガラスを破砕するための鋭い先端部を備えています。
後部座席などに子供が乗る場合は、子供が不用意に取り出して使用できる場所を避けながら、緊急時には大人がすぐ取り出せる位置を考える必要があります。
3.脱出ハンマーを使うときの注意点
① まず「割れるガラス」を確認しておく
自動車のガラスには、大きく分けて「強化ガラス」と「合わせガラス」があります。
強化ガラスは脱出ハンマーで破砕できますが、合わせガラスは2枚以上のガラスの間に樹脂製の中間膜があり、一般的な脱出ハンマーでは破砕して脱出口を作ることができません。
フロントガラスには合わせガラスが使われています。また、車種によってはドアガラスやサイドガラス、リアガラスにも合わせガラスが使用されています。
「水没してから、どの窓を割ればよいのか探す」のではなく、自分の車のどの窓が脱出ハンマーで破砕可能なのか、あらかじめ販売店への確認、又は取扱説明書、ガラスの表示※1又はガラス断面の判別※2によって確認してください。
※1 JISマークのある自動車用ガラスでは、強化ガラスは「T」「TP」、合わせガラスは「L」「LP」という表示が一つの確認方法になります。Eマークでは、Eマークの近くにⅡが表示されている場合は合わせガラスの表示です。
※2 3層になってやや厚みがあるのが合わせガラス
② ガラスを割る際のけがに注意
強化ガラスは破砕すると細かい粒状になっていきますが、上から落ちてくる大きな破片でけがをする可能性があります。顔をガラスから離し目や顔を守るとともに、使う腕や手元もガラス破砕後はガラスから離すようにしてください。
また、窓枠に残ったガラスを脱出ハンマーなどによって除去することで、身体を外に出すときのケガを防止することができます。
【参考】インスタ動画(強化ガラスが割れる様子)
強化ガラスが割れる様子
③ シートベルトが外れない場合
シートベルトカッター付きの製品であれば、事故などでバックルが外れない場合にシートベルトを切断できます。どこを握るのか、カッターをどの方向に動かすのか、ガラスはどの部分で破砕するのかなどを、購入時に取扱説明書を見ながら確認しておきましょう。
4.脱出ハンマーにも性能の違いがある
国土交通省は、市販されている脱出用ハンマー51銘柄について破砕性能試験を実施し、その結果を踏まえ、十分な破砕性能が確保されたJISマーク(JIS D5716 自動車用緊急脱出支援用具)、GSマークを取得した製品や、自動車販売店などが推奨する製品(純正品等)の購入を推奨しています。脱出ハンマーによっては、高熱(~90℃)で変形する製品があることが指摘されています。
5.まとめ―「持っている」から「使える備え」へ
脱出ハンマーは、車に積んでいるだけでは十分とはいえません。
① 自分の車のどの窓が破砕できるか確認する(強化ガラスであることの確認)
② シートベルトを装着した状態でも手が届く場所に設置する
③ 車内で散逸しないよう固定する
④ ハンマーとシートベルトカッターの使い方を確認する
⑤ 性能が確認された製品を選ぶ
これらを事前に確認しておくことが大切です。
豪雨や事故は、いつどこで発生するか分かりません。いざというときに初めて脱出ハンマーの場所や使い方を確認するのではなく、平時のうちに「使える備え」にしておきましょう。
消棒Rescue®は、「切る」「割る」「消す」の3機能を搭載した自動車緊急脱出支援用具(脱出ハンマー)です。
ガラス破砕試験(70歳女性の片腕ストロークの力で破砕)、シートベルト切断試験(30回連続で切断)、耐寒・耐熱試験(−30℃で96時間、90℃で96時間)、落下試験(1.5mの高さからコンクリート板に落下)などの試験に合格したJIS D5716認証商品です。




