車の浸水対策方法には、マフラーからの浸水に気をつける、アンダーパスや高低差の大きい道路では引き返す、ゲリラ豪雨の急激な水深上昇に注意するなどがあります。
台風による暴風雨やゲリラ豪雨など、水害を伴う自然災害が多発する近年。ふだんから自動車を多く利用する方は、車の水害対策にも気を配りたいものです。この記事では車の水害にはどんな被害があるかや、いざというときに備える対策をご紹介します。
目次
1.車の水害対策とは?
車の水害対策とは、大雨、洪水、津波などの自然災害や、海や河川への転落事故などによる浸水・冠水の被害に備えることです。
道路が冠水した場合、自動車での移動は大きな危険が伴います。冠水した道路は目で見た目では水深がわからないため、思っていたより深い水たまりにはまりこんでしまう場合があります。
ぬかるみなどにタイヤを取られ、脱輪・落輪する恐れもあります。 そのため冠水した道路では決して無理をせず、運転を控えることが基本です。やむを得ず冠水路を走行した場合、乗車する人に危険が生じるほか、自動車もさまざまなダメージを受けます。
2.車の浸水の目安
車は、どの程度までなら浸水に耐えられるのでしょうか?
車種によって耐えられる水位は異なりますが、いずれの場合も、エンジンや電気系統が故障すると走行不能になってしまうため、マフラーに達するかどうかが一つの目安となります。
これが、ドア下部までの浸水であれば、車内への浸水はほとんどありません。エンジンや電気系統への影響も少ないです。
一方、ドア下部からシート下まで浸水すると、車内に水が浸入し始めます。この場合、エンジンや電気系統への影響も考えられます。
シート下からダッシュボード下まで浸水してしまうと、車内が水没します。ここまでくると、エンジンや電気系統が故障し、走行不能になる可能性があります。
さらに、ダッシュボード上まで浸水してしまうと、もう車体が水没します。車体やエンジンが重大な損傷を受け、修理不能になる可能性があります。
3.車が浸水したらどうなるのか
では、車がマフラーを超えるほど浸水してしまった場合、車はどうなってしまうのでしょうか?
電気系統が故障する
車の内部には、電装部品のさまざまな配線が張り巡らされています。浸水・冠水により外見はダメージを受けていないように見えても、水に濡れることで内部の電気系統が破損している場合もあります。
とくに海水による浸水・冠水を受けた場合は、塩水はより電気を通しやすいため感電事故や電気系統のショートによる車両火災につながる恐れがあります。
部品が劣化する
水に浸かった部品は、以下のような影響を受けます。
・金属部品…錆びて腐食し、強度が低下したり、破損したりする可能性があります。
・電気部品…ショートや故障の原因になる可能性があります。
・内装部品…カビや臭いの原因になる可能性があります。
・エンジンオイル…乳化して性能が低下する可能性があります。
浸水の程度によって、部品の劣化速度は異なります。水深が浅く、すぐに水から出せれば、部品の劣化を抑えることができます。しかし、水深が深かったり、長時間、水に浸かっていたりすると、部品の劣化が進行し、修理不能になる可能性があります。
汚れやにおいが残る
自然災害などであふれた水には下水や泥などが混ざっています。汚水や泥水が車内まで入り込んだ場合、一般的な掃除では完全にはきれいになりません。シートに汚水が染み込むとカビや悪臭の原因になるため、シートごと交換しなければならないこともあるでしょう。海水の場合は金属部の腐食が進む場合もあります。
廃車になる
車の浸水被害は、浸水の程度や車種によって異なります。
マフラーの水位以上に浸水してしまった場合や、長時間、水に浸かっていた場合は、廃車になる恐れがあります。
特に、ダッシュボード上までの浸水では、車体やエンジンが重大な損傷を受け、修理不能になる恐れがあり、廃車になる可能性が非常に高いです。
また、浸水した車の修理費用は、数万円から数十万円と高額になる場合があります。車の保険に加入している場合は、保険で修理費用を補償できる可能性もあります。
ただ、たとえ修理できたとしても、以下のような問題が発生する可能性があります。
・電気系統のトラブル…ショートや故障が発生しやすくなる。
・エンジンのトラブル…エンジンオイルが乳化したり、内部部品が錆びたりして、故障が発生しやすくなる。
・臭いの発生…カビや腐敗臭が発生し、車内に不快な臭いが充満する。
・車体の腐食…金属部品が錆びて腐食し、車体の強度が低下する。
これらの問題を考慮すると、浸水した車は、修理しても安全に走行できない可能性が高いため、廃車を選択する方が賢明な場合もあります。
4.車の浸水を防ぐには
自動車の浸水・冠水を防ぐには、日頃からどのようなシーンにどのような危険が潜んでいるかを知っておくことが大切です。次の項目では、浸水・冠水被害を防ぐために気をつけておきたいポイントをご紹介します。
浸水事故から脱出する流れ
水害時に冠水した道路を相克する際の危険性
対策1:マフラーからの浸水に気をつける
一見、浅い水たまりに見えても、水しぶきを巻き上げて走行することでマフラーなどからエンジン内部に水が入り込むとエンジンが破損してしまいます。駆動系の損傷は自動車にとって大きなダメージとなるため、このくらいであれば大丈夫だろうという油断は禁物です。
対策2:アンダーパスや高低差の大きい道路では引き返す
アンダーパス※は見通しが効きにくく、走行先の水深が思いのほか深い場合もあります。また、高低差の大きい道路も同様です。このような道路で冠水に直面したら、無理な侵入は控えることが懸命です。
※ アンダーパスとは、交差する鉄道や道路などの下を通過するため、周辺の地面よりも低くなっている道路のことをいいます。
地形的に雨水が集中しやすい構造となっています。
対策3:ゲリラ豪雨の急激な水深上昇に注意
近年のゲリラ豪雨では、大丈夫だと思っていても急激に水かさが増すことがあります。このような場合には早めに車を高台に移動させることも愛車を守る対策として有効です。
5.いざというときの準備
このように自動車の浸水・冠水リスクは私たちの暮らしの身近なところに潜んでいます。 万が一、水深の深い場所に侵入してしまった場合、水圧でドアが開かなくなり車内に閉じ込められてしまう恐れもあります。そのような場合には、どう対処すればよいのでしょうか。
窓ガラスを割る
水中で車内に閉じ込められてしまった場合、まず落ち着いてシートベルトをはずします。
水圧でドアが開けられないときで、窓が水面よりも高い位置にある場合は窓を開けて脱出を試みます。
電気系統の故障などでパワーウィンドウが機能しない場合はガラスを割って脱出しなければなりません。その際、フロントガラスは膜が挟み込まれた特殊なガラス(合わせガラス)で割りにくいため、サイドガラス(ドアガラス)を割ることが基本です。サイドガラスは破片が丸みを帯びた粒状に砕けるため、比較的安全に破砕することができます。
脱出用ハンマーでも割れないガラスについて
脱出ツールの準備
慌てて脱出しなければいけないような状況では、ヘッドレストや傘など車内にたまたまあるものではすばやくガラスを割ることはできません。
緊急時に速やかに自動車のサイドガラスを割るには、脱出用ハンマーなどの専用ツールを用意しておくことがおすすめです。
また、車に衝撃が加わった時にはエアバックが膨らむとともにシートベルトが堅く締まるので身動きできない状況になります。その場合には、シートベルトを切断する機能を持った緊急脱出支援ツールが必要となります。
ワイピーシステムの「消棒RESCUE」は、世界初「切る」「消す」「割る」の3機能一体にした自動車用脱出ツールです。上記のようにサイドガラスを破砕し、シートベルトを切断するとともに、エンジンからの出火や、車内の出火のための消火機能があります。
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6.水害にあった車の処理
浸水・冠水の被害にあった車は、外見上問題がなさそうに見えても、内部は重大な損傷が生じている場合があります。感電やエンジン破損の恐れなどがあるため、水が引いても自分でエンジンをかけるのではなく、ロードサービスや販売店、整備工場に相談することが奨励されています。とくに、ハイブリッド車や電気自動車は高電圧のバッテリーを搭載しており、感電の危険があるためむやみに触らないよう注意が必要です。
7.まとめ
このように車の水害の危険は私たちの身近なところにあり、怪我や命の危険があるだけでなく、車にも大きなダメージを与える恐れがあることをご紹介しました。
浸水・冠水被害に合わないようにリスクの高い場所を把握し、気をつけることが一番ですが、いざというときに備えて脱出ツールを用意しておくことも車の水害対策には有効です。
日頃から脱出ツールを用意しておけば、自分や同乗者の命を救うことにもなるほか、事故に遭遇した場合に他車両の救助にも役立ちます。自然災害の不安を感じる今だからこそ、これを機に脱出ツールを備えてみてはいかがでしょうか。