
9月1日は「防災の日」です。この日は官公庁や学校、企業などで防災訓練を実施するのが慣習になっています。一方で、訓練の実施や参加しない企業も少なくありません。
そもそも、防災訓練はなぜ必要なのでしょうか。また、企業で訓練を実施する際には、具体的に何をすればよいのでしょうか。万一に備えて取り組みたい、企業の防災対策について解説します。
目次
1.防災の日とは? 9月1日が防災の日になった理由
防災の日とは、「台風や地震などの災害について国民一人ひとりが認識を深め、これに対処する心がまえを準備する」ことを目的に、1960年の閣議で制定されたものです。 防災の日が9月1日になった理由は、古くから台風が来襲しやすい厄日(二百十日)とされてきたことや、この日に「関東大震災(1923年)」が発生したことが挙げられます。特に関東大震災は、10万人を超える犠牲者が出た未曾有の災害となり、その後の都市防災対策が大きく見直されるきっかけになりました。 自然災害の多い日本では、いつ災害に見舞われるかわかりません。いつ襲われても適切な行動ができるよう、「防災に対する認識を改めて見直す日」として、9月1日の防災の日には訓練を実施する自治体や学校、企業・団体などが多いのです。
2.企業で防災訓練が必要な理由
防災の日に限らず、ほとんどの企業が防災訓練を定期的に実施しているでしょう。では、なぜ企業で防災訓練を実施する必要があるのでしょうか。 理由の一つに、多くの企業が「法律で義務化されている」ことが挙げられます。消防法第36条では、大規模建築物を所有する企業などに対して「防災管理業務の実施」を義務付けています。防災管理業務には、消防施設の点検や報告書の作成などの業務がありますが、その一つに「防災訓練を年に1回以上実施すること」という項目もあるのです。 ほかにも、防災訓練には「従業員や顧客の命を守る」という役割があります。万一のときに「誰がどのように行動すればよいか」「顧客対応はどうするか」といったイレギュラーな対応に、訓練を通じて確認しておくと安心でしょう。
また、災害後の事業継続を検討する際にも、自社や顧客へのダメージを最小限に抑えるために、あらかじめ計画を立てておく必要があります。いわゆるBCP対策も防災訓練を含めて考えておけば、いざというときに役立つのです。
3.企業が取り組みたい5つの防災訓練
企業が実施する防災訓練には、具体的にどのような取り組みがあるのでしょうか。一例として、以下に訓練内容をまとめてお伝えします。
消火訓練
大地震や台風などの災害時に、注意したいのが「火災」です。最近でも、能登半島地震で地域一帯が焼失する火災が発生したのは記憶に新しいところでしょう。 火災を見つけたら消防署へ通報すると同時に、火種が小さいうちに初期消火を試しみることも重要です。
初期消火の実施
初期消火を確実に行うには、消火器や消火栓の設置場所を確認するのはもちろん、「使い方を覚えること」も大事です。マニュアルを読むだけでは、実践で使えないケースもあります。防災訓練を実施して、消火器などの使い方を習得しましょう。
消防署への通報
消防署に通報する際に、「誰が通報するか」といった通報経路を決めることも大切です。あらかじめ連絡する担当者を決めておき、確実に知らせる方法を確認します。 状況によっては、電話が通じないことも考えられます。その場合、消防署に直接行って要請しなければなりません。最寄りの消防署へのルートも、訓練で確認したいポイントです。
二次災害を防ぐ
地震直後に火災が発生しなくても、避難後に発生するケースも想定されます。特に、停電復旧時に起きやすい通電火災には注意が必要です。避難する前に「プラグを抜く」「ブレーカーを切る」「ガスの元栓を閉める」といった手順もマニュアル化しておき、訓練で確認しましょう。
避難訓練
【h3】避難訓練 建物が大きく損壊したり火災が燃え広がったりといった、社員の身に危険が迫っているときは、避難しなければなりません。外は、看板やガラスなどの落下物が散乱しているケースも考えられます。安全な避難ルートを確認するのはもちろん、安否確認の方法も訓練でチェックすることが大事です。
避難ルート・避難所の確認
エレベーターは、災害時に使えないことがあります。非常階段の位置や通行に支障がないかなど、訓練で確認しましょう。 建物の外に出たら、自治体が指定する広域避難場所まで歩いて移動します。その際に、ルート上に危険なものがないかもチェックします。落下物による負傷を最小限に抑えるうえで、防災用ヘルメットの準備も検討したいところです。
安否確認システムの周知
災害発生時に、外出している社員がいるケースも考えられます。全社員の安否を確認するために、緊急連絡網の整備や情報収集の方法を確認することも大切です。 最近では、メールやSNSなどを活用した「安否確認システム」を導入する企業が増えています。いざというときでも全社員が使えるよう、訓練で周知・使用方法の確認を徹底しましょう。
救出・救助訓練や応急救護訓練
安否確認が取れないなど行方不明者がいる場合は、建物内などに取り残されている可能性があります。あらかじめ、行方不明者を探す捜索係のメンバーを決めておき、救出活動ができるかも確認しておくと安心です。 また、負傷者がいた場合には応急救護が必要です。訓練を通じて三角巾やAEDの使い方、心臓マッサージの方法などを学んでおけば、命が助かる確率が向上します。応急救護の訓練は、消防署や赤十字などの専門機関で受講できますから、いざというときに備えて社員などに習得させることも検討しましょう。
台風対策訓練
地震だけでなく、台風に関する対策も考慮しておきたいところです。エントランスや窓などの戸締まり、シャッターの開閉など、浸水被害を想定した設備のチェックを行います。 室外に置いてあるものが飛ばされて、被害を拡散することも想定されます。室内に移動できるかも、確認したいポイントです。強風などで窓ガラスが割れるケースも考えられます。内側に飛散防止のフィルムを貼るなどの対策も検討しましょう。 このほか、断水も想定されます。「十分な飲料水を確保できているか」「期限は切れていないか」なども、訓練時に確認したいポイントです。
その他の災害に備えた訓練
どのような災害に見舞われるかは、地域によっても異なります。その地域で発生しやすい災害をあらかじめ把握しておき、必要な対策を打つことも大切です。 例えば、海沿いの地域であれば「津波対策」が必要なケースもあるでしょう。津波対策の基本は、「高いところに素早く逃げること」です。避難場所の確認や、徒歩で避難できるかといったルートの確認も訓練で行います。大地震が発生した際には、停電して情報が取得しづらいことも考えられます。携帯ラジオなどの準備や使い方も確認しましょう。 火山が近くにある場合は、噴石や火山灰などから身を守るグッズも必要でしょう。防災用ヘルメットや火山灰対策用のゴーグルなど、訓練時に使い方を確認しておくと安心です。
4.消防法の改正にあわせた設備更新も確認
防災訓練のほかにも、企業は防災設備の設置などの法令も守らなければなりません。これを定めた法令(消防法など)は不定期に改正されるため、「現在の法律に対応しているか」も防災の日を機にチェックするとよいでしょう。 一例として、自立避難が困難な人がいる病院や福祉施設などには、スプリンクラーや自動火災報知機などの設置が義務付けられています。また飲食店の場合、面積にかかわらず消火器具の設置が2019年10月の改正で義務化されました。 もし設置していない場合は、速やかな対応が必要です。設置に関するコストについて、国の補助金制度が使えるケースもありますので、自治体のホームページなどで確認しましょう。
5.いざというときに備えておきたい防災グッズ
防災訓練では、事業内容などにあわせて必要な防災グッズを準備することも大切です。 例えば、ヘルメット。外出の多い社員の場合、持ち歩くのは難しいでしょうから、「折りたたみ式の防災用ヘルメット」を携帯させるのも一手です。場所を取らないヘルメットですから、収納箇所の少ない企業にも適しているでしょう。
車で移動する社員が多い企業なら、車内に閉じ込められたときのために「自動車用緊急脱出支援ツール(脱出ハンマー)」があると安心です。台風やゲリラ豪雨などの際に、水没したアンダーパスに車が侵入して動けなくなるといった事故が毎年起きています。こうしたトラブル時に緊急脱出ツールがあれば、速やかに車から脱出でき社員の命を守れます。 ワイピーシステムの消棒Rescue®は、車内から脱出するために必要な「ガラス粉砕ハンマー」と「シートベルトカッター」、そして車両火災が発生した際に初期消火ができる「小型二酸化炭素消火具」を1台に備えたユニークな製品です。
ガラス粉砕ハンマーは、力の弱い女性や高齢者の方でもドアの窓ガラス(強化ガラス)などを短時間で破砕できます。また、衝撃でプリテンショナー機構が発動しシートベルトがきつく締め付ける場合を想定し、1本あたり2秒未満で切れるシートベルトカッターを搭載することにより迅速な脱出をサポートします。小型二酸化炭素消火具は消防法に準拠しており、自動車内、エンジンルームなどの初期火災にも有効です。
社用車で移動することが多い企業では、こうした緊急脱出ツールを車内に設置されてはいかがでしょうか。自分の車だけでなく、近くの車が同様の事態におちいった際には、車内にいる人の命を救うことにもつながります。
まとめ
企業が防災訓練を実施するのは、法律で定められていることや、社員や顧客の命を守るといったことのほかにも、「社員の防災意識を高める」のも目的の一つです。災害はいつ発生するかわかりません。いつ発生しても、みんなが速やかに適切な行動がとれるように、あらかじめ備えることが大切です。 そのためには、防災計画を立てたり必要な防災グッズを用意したりするのも、企業には求められます。その計画にもとづき、万一のときに対応できるよう防災訓練で確認するのが、社員や顧客の命を守るうえで必要なことではないでしょうか。