
近年、夏の定番アイテムとなったハンディファン(手持ち扇風機)。従来の「風を送るだけ」の製品に加え、冷却プレートを搭載したモデルや、ミストを噴霧して涼感を高めるモデルなど、さまざまな工夫を凝らした製品が登場しています。特に近年は、冷却プレートを搭載したモデルが人気を集めており、従来の「風を送る」だけではない暑さ対策グッズへと進化しています。
一方で、こうした製品の多くにはリチウムイオン電池が使用されています。製品の安全性は年々向上していますが、落下による内部損傷や経年劣化による発火・発煙のリスクがなくなったわけではありません。
本コラムでは、最新のハンディファンの進化を紹介するとともに、NITEの注意喚起や、古いハンディファンを使用する際の注意点について解説します。
1.ハンディファン事故は今も発生している
消費者庁が2025年に公表した資料によると、2020~2024年度の5年間でハンディファンに関する発煙・発火等の事故は26件報告されています※。そのうち16件は充電中に発生しており、充電時の取り扱いには特に注意が必要です。以下事故例を紹介します。
・パソコンのUSBポートに接続していたハンディファンから出火
・充電中に本体やUSB端子部分が溶融
・充電後にカバンへ入れていたところ発煙・発火
※消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう - 身に着ける、持ち歩く製品にも使用されています –」(2025年10月2日)
ハンディファンは、手から滑り落ちる、カバンから落とすことが珍しくありません。しかし、落とした直後は普通に動いていても安心できません。衝撃によってリチウムイオン電池内部が損傷し、後日ショートや発火につながるおそれがあるためです。NITE(製品評価技術基盤機構)は「強い衝撃を与えた場合は使用を中止し、事業者に相談するように」と呼びかけています※。
2.ハンディファンの安全機能は進化している
近年のハンディファンは、冷却プレートやミスト機能などの付加価値だけでなく、リチウムイオン電池の安全性向上にも力が入れられています。代表的な安全対策として次のようなものがあります。
① 過充電防止
充電が完了すると自動的に充電電流を制御し、それ以上充電しないようにする機能です。リチウムイオン電池は過充電状態になると内部で異常発熱を起こす可能性があるため、多くの製品で保護回路が搭載されています。
【表示例】過充電保護、充電保護回路、Battery Protectionなど
② 過放電防止
電池残量が極端に少なくなった状態での使用を防ぐ機能です。リチウムイオン電池は過放電によって内部構造が劣化し、その後の充電時に発熱や内部短絡を起こすリスクが高まるため、一定電圧以下になると自動停止する製品が増えています。
【表示例】過放電防止、過放電保護、電池保護回路など
③ 温度監視機能
電池や回路の温度を常時監視し、異常な温度上昇を検知すると充電や運転を停止する仕組みです。特に近年増えている冷却プレート付きの高出力モデルでは、温度管理が重要な安全機能となっています。
【表示例】温度センサー搭載、温度保護機能、異常温度検知、温度監視システムなど
④ 保護回路の多重化
最近の製品では、一つの保護機能だけに頼らず、過充電防止、過放電防止、過電流防止、短絡(ショート)防止などを複数組み合わせる「多重保護」が採用されています。万一、一つの保護機能が正常に作動しなくても、別の保護機能がバックアップする考え方です。
【表示例】5つの安全保護機能、6重保護、多重保護システムなど
⑤ 落下試験・衝撃試験
ハンディファンは手に持って使用するため、落下事故が起こりやすい製品です。そのため近年は、落下試験、振動試験、衝撃試験などを実施し、日常使用で想定される衝撃に耐えられるか確認するメーカーも増えています。
【表示例】落下試験実施済み、衝撃試験実施など。パッケージには書かれていないこともあります。確認方法としては、メーカーHPで品質試験、安全試験を確認します。
⑥ 国際安全規格適合セルの採用
近年は電池セル自体についても安全性が重視されています。代表的なものが「IEC 62133-2」という国際安全規格です。この規格では、過充電、外部短絡、落下、振動、温度変化などに対する安全試験が定められており、この規格に適合したセルを採用していることを公表しているメーカーもあります。
【表示例】IEC62133-2適合、IEC62133認証セル採用。製品やパッケージに表示されていないことが多く、メーカーHPなどで確認します。
⑦ 誤作動防止機能
鞄やリュックの中で電源ボタンが押され、勝手に運転を開始してしまうことを防ぐための機能です。密閉された鞄の中で長時間動作すると、バッテリー消耗、モーター発熱、リチウムイオン電池への負荷が発生する可能性があります。そのため最近の製品では、意図しない起動を防ぐ工夫が増えています。
【表示例】ダブルクリックで電源ON、誤作動防止機能搭載など
(安全機能一覧)
以上のように安全対策も進化していますが、安全機能があるから事故が起きないわけではありません。NITEや消費者庁が繰り返し指摘しているのは、落下、水濡れ、車内放置、経年劣化による事故です。
安全機能は事故を減らすためのものですが、正しい使い方に代わるものではありません。
3.これまで使ってきたハンディファンは安全か確認を
これまで使ってきたハンディファンが以下のひとつでも当てはまる場合には使用を見直しましょう。
□ 長期間使用している(目安として3年以上)
□ 充電時間が長くなった
□ 使用時間が極端に短くなった
□ 本体が熱くなる
□ 落としたことがある
□ 本体が変形している
□ 異臭がする
4.廃棄時にも注意

ハンディファンの多くにはリチウムイオン電池が使用されています。不要になったハンディファンを一般ごみとして廃棄すると、ごみ収集車やごみ処理施設で電池が損傷し、発火するおそれがあります。実際に、リチウムイオン電池製品が原因とみられる火災が全国のごみ処理施設などで発生しています。廃棄する際は、自治体や販売店が定める回収方法に従って処分してください。




