
消火器の種類には、粉末消火器、二酸化炭素消火器(不活性ガス消火器)、水消火器などがあります。
初期消火で燃え広がるのを防ぐには、火災の種類に応じて適切に消火器を使いわけることが重要です。 では、どのような火災にどの消火器を使用するのが適切なのでしょうか。本コラムでは、消火器の種類とそれぞれに適した火災の種類について解説します。また、消防法で定められている消火器の設置基準についてもお伝えします。
目次
1.火災の種類について
消火器の種類を説明する前に、「火災の種類」について簡単に説明しておきましょう。 火災の種類には、燃える物質によって「A火災(普通火災)」「B火災(油火災)」「C火災(電気火災)」の3つにわけられます。
- A火災(普通火災):木製品・紙・繊維製品・ゴム・樹脂などが燃える火災
- B火災(油火災):ガソリン・灯油・てんぷら油などが燃える火災
- C火災(電気火災):電気設備や器具、通電中のコンセントなどが燃える火災
これを踏まえて、消火器の種類を説明します。
2.消火器の種類
消火器の種類は、充填されている消火剤に応じて「粉末消火器」「二酸化炭素消火器(不活性ガス消火器)」「水消火器」「泡消火器」の4つにわけられます。それぞれの特徴をみていきましょう。
粉末消火器
粉末消火器とは、粉末状をした消火剤の冷却効果または窒息効果によって消火する、もっともメジャーな消火器です。
消火剤には複数の種類があり、薬剤の色で見分けることができます。
例えば、薄青色は「Na(炭酸水素)」、紫色は「K(炭酸水素カリウム)」、ねずみ色は「KU(炭酸水素カリウムと尿素の反応物を主成分)」、薄紅色は「ABC(リン酸アンモニウム)」に着色されています。
このうち、もっともポピュラーなのが「ABC粉末消火器」です。文字通り、A火災・B火災・C火災に対応しており、火元を消火剤が覆い窒息させることにより鎮火します。なお、粉末消火器は浸透力が弱く完全に消火できない場合がありますので、再燃防止に努める必要がある点に注意が必要です。
二酸化炭素消火器(不活性ガス消火器)
二酸化炭素消火器とは、不活性ガス消火器の一種で、二酸化炭素ガスが持つ窒息効果で消火する消火器です。
不活性ガス消火器には二酸化炭素消火器のほかにも、ハロゲン化物消火器もあります。
二酸化炭素消火器は、A火災での使用は限られますが、B火災・C火災には適合します。とりわけC火災(電気火災)に有効で、消火剤は気化するため鎮火後の設備復旧が容易なのが特徴のひとつです。消火剤が金属や電気機器類と化学反応を起こす心配がなく、パソコンなどの精密機械が汚損するリスクも最小限に抑えられます。
なお、閉め切った室内で使用すると二酸化炭素の濃度が高まり中毒になるおそれがあるため、適切な使い方を把握したうえでの使用が求められます。また、法令により設置場所が限られている点も注意が必要です。
水消火器
水消火器とは、純水に潤滑剤を混ぜた消火剤で鎮火させる消火器です。
充填物によって「強化液消火器」「中性強化液消火器」「水(浸潤剤等入)消火器」などの種類があります。
また、この後に紹介する「泡消火器(機械泡消火器)」も、水消火器の一種です。
水消火器は、A火災に用いられることが多く、浸透性と再燃防止効果に優れている点が特徴のひとつです。また、消火剤に使用する水は塩類を含まない純水ですから、消火後の残留物はほとんどありません。電気伝導率が低いことも特徴で、C火災での消火も可能です。ただし、漏電により被害が広がるおそれがあるため、復旧時には注意が必要です。
B火災では、油が飛散して延焼を促すおそれがありますので、使用しないでください。
3.火災種類別の適応消火器(A火災・B火災・C火災とラベルの色の違い)
改めて、火災の種類別に適した消火器の対応表をまとめました。
>一般社団法人日本消火器工業会「火災種別と薬剤と特性種別の対応表」より引用
日本で提供される消火器には、「A火災(普通火災)」「B火災(油火災)」「C火災(電気火災)」のうち、どの火災に適しているかを示す3種類の「適応火災マーク」が色分けされて表示されています。このマークを見て、火災の種類に応じた消火器を使いわけることが大切です。
・白…A火災(普通火災)
・黄…B火災(油火災)
・青…C火災(電気火災)
消火器のサイズ
ABC消火器は、薬剤重量によって、次のように型がわかれています。
・3型(1㎏)
・4型(1.2㎏)
・5型(1.5㎏)
・6型(2㎏)
・10型(3㎏)
・20型(6kg)
4.消火器の使い方
いざという時のために、消火器の使い方を覚えておきましょう。
消火器の使い方は「PASS」の頭文字を使った方法で覚えることが推奨されています。
P(Pull)
消火器の安全ピンをしっかりと握り、引き抜いて、消火器が作動する準備を整えます。
A(Aim)
消火器のノズル(またはホース)を火災の根本に向けます。
ただし、火災から適切な距離(通常は約2から3メートル)を保ちながら行ってください。
炎の上部ではなく、燃焼している物質の最も熱い部分を狙うことが重要です。
S(Squeeze)
消火器の操作レバーを両手でしっかり握り、強く押し下げます。
これで、消火剤が噴射されます。
S(Sweep)
ノズルを左右に振りながら、火災の根本を狙って消火剤を噴射し続けましょう。
火が消えるまで、この動作を続けてください。
5.消火器の設置基準
消防関係法令では、消火器の設置が義務付けられている建物を細かく定めています。
設置対象となる建物は、「面積に関係なく設置が必要な建物」「延面積150㎡以上の建物」「延面積300㎡以上の建物」の3種に大きくわけられます。
また、消火器の設置本数は、各建物の面積や構造(耐火構造か否か)、危険物や指定可燃物の数量、消火器の能力単位などに応じて決まります。
消火器の設置場所も「通行や避難に支障がない場所であること」「防火対象物から歩行距離20m以下(大型消火器は30m以下)に設置すること」「床面からの高さ1.5m以下に設置すること」など細かく規定されていますから、消防関係法令に従い設置することが求められます。
消火器の設置義務に関する詳細は、以下のページよりご確認いただけます。
消火器の設置が義務付けられている建物では、6カ月に1回の法令点検および報告書を作成して管轄の消防署に報告することも義務付けられています。
もちろん、火災やボヤにより消火器を使用した場合にも、報告が必要です。ただし、簡易消火具に関しては報告の義務はありません。
6.まとめ
初期消火で重要な役割を果たす消火器ですが、使い方を誤るとかえって被害を大きくする原因になります。適合する火災の種類や使い方なども、日ごろから確認しておくことも大事でしょう。
消火器によっては、使い方の難しい商品もあります。いざというときに迅速に対応するうえで、消火器とは別に「エアゾール式簡易消火具」を準備するのも一手です。
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