
東京消防庁によると、令和3年度に発生した火災のうち35.6%が、電気関係に起因する「電気火災」だったそうです(※)。
その電気火災の一因には、今回紹介する「トラッキング現象」も多く含まれます。
トラッキング現象は、一般家庭からオフィス、工場など、あらゆる場所で発生する可能性があるため、一人ひとりが十分に注意しなければなりません。
今回は、トラッキング現象が起きる原因や注意点を中心に、電気火災の発生を抑えるためのポイントをお伝えします。
目次
トラッキング現象とは
トラッキング現象とは、コンセントと電源プラグの間に溜まった埃が空気中の湿気を吸収し、やがてショート・発火する現象のことです。
近くにカーテンやカーペットなどの燃えやすいものがあると、それに引火して火災が広がるおそれがあります。
トラッキング現象は、通電している場所ならどこでも生じる可能性があります。
一般家庭であれば、冷蔵庫やテレビなどの家電の電源プラグをコンセントに差し込んだまま長年使い続けている場所で、またオフィスや工場でも、電気室やサーバルームといった電気機器が多く集まる場所で発生することが多いです。
このように、埃の溜まりやすい場所で電源プラグを長く差し込んだままの状態で使い続けると、トラッキング現象が生じやすくなります。
※出典:東京消防庁「広報テーマ 2022年8月号
トラッキング現象が起こる原因
トラッキング現象の原因は、「埃」と「湿気」、そして「電気」です。
コンセントと電源プラグの間に挟まっている埃が湿気を帯びると、電源プラグの電極間に微少の電流が流れやすくなります。
その電流によって熱が生じ、やがて埃は炭化して電気の通りやすい道(トラック)を作り、放電状態になります。
この状態が長く続くと、電極間が突然ショートして発火するのです。
トラッキング現象は、湿気の高い場所や水滴のかかりやすい場所で生じやすく、梅雨時期や夏場はもちろん、冬場も結露が埃に付着して発火することがあります。
トラッキング現象を防止する方法は?
トラッキング現象を防ぐには、原因となる埃と湿気、そして電気を上手にコントロールする必要があります。
具体的には、次のような方法が挙げられます。
コンセント付近を定期的に掃除する
コンセントと電源プラグの間に埃が溜まっていないかを定期的にチェックし、汚れていたら速やかに掃除します。
長く差し込んだままの電源プラグがある場合は、ときどき抜いて、乾いた布で埃や湿気をきれいに拭き取りましょう。
また、「使わない電源プラグは抜く」「使わないコンセントにはカバー(キャップ)で塞ぐ」という方法も、トラッキング現象を防ぐ一手です。
タコ足配線を避ける
電源タップを用いてタコ足配線にすると、電源プラグとの接点が多くなるためトラッキング現象が生じる確率が高まります。
また、タップやプラグの重みで緩みが生じ、コンセントとの間に埃が溜まりやすい状態ができることも、トラッキング現象を起こす一因です。
過剰な配線は避けましょう。
なお、しばらく使っていない電源タップには、コンセント付近に埃が溜まっているおそれがあります。
とくに古い電源タップを使用する際は、注意が必要です。
埃の侵入を防ぐ
埃が少なければ、トラッキング現象の発生を抑えられます。
工場の電気室のように、コンセントや電源プラグ付近の清掃が難しい場所には、フィルターを設置するなどして埃が侵入しにくい環境をつくりましょう。
万が一火災が発生した際は冷静に対処しましょう
トラッキング現象は人の目につきにくい場所で発生するため、気づいたときには火災が広がっていることも考えられます。
万一火災が発生したら、速やかに消火活動を実施することが重要です。
火災による被害を抑えるには、発生から2分以内に初期消火を実施することが大切だといわれます。
ただ、慌てていると消火活動に手間取ってうまく進められないケースもあるでしょう。
そこで、誰でも簡単に使える簡易消火具を備えるなど、初期消火をスムーズに進める体制を整えることも大切です。
当社では、初期消火に特化したエアゾール式の簡易消火具「消棒®」シリーズを提供しています。
一般的な消火器よりもコンパクトで軽量。女性や高齢者でも使いやすい簡易消火具です。
消火剤には、安全性の高い二酸化炭素を使用しており、電気系統に起因する火災にも十分に効果を発揮します。
また、消火活動後に周囲が汚れる心配もなく、後始末が容易です。
迅速な消火活動を進めるうえでも、消防法に準拠した「消棒®」シリーズをぜひご検討ください。
まとめ
トラッキング現象を防ぐには、日ごろからコンセントや電源プラグを確認し、清潔に保つことが大切です。
定期的に掃除し、トラッキング現象が生じにくい環境をつくりましょう。
もし、電源プラグなどが異常に熱くなっていた場合は速やかにプラグを外し、専門業者に点検してもらったり新しいものに交換したりすることもポイントです。
また、コンセントの近くには電気火災に対応した消火器や簡易消火具を設置して、万一のときに迅速な対応ができる体制を整備するなど、火災を広げない対策も実施しましょう。