猛暑だったこの夏、街中で「携帯扇風機(ハンディファン)※」を持ち歩く人が増えています。暑さ対策に便利な道具ですが、携帯扇風機が発火したり破裂するといった事故が起きていることをご存じでしょうか?
ここでは、携帯扇風機による事故の事例や原因を中心に、事故を防ぐためにできることなど、利用するときの注意点や対策について解説します。
※携帯扇風機、手持ち扇風機、ハンディファン、ハンディ扇風機、首掛け扇風機、ネック扇風機、ミニ扇風機などの名称で、電池内蔵又は装着の小型、軽量、持ち歩き、身に着け、又はフックにより板などに取り付け可能な扇風機
目次
1.手持ち扇風機の爆発・発火事故が多発している
独立行政法人の製品評価技術基盤機構(NITE)によると、手持ち扇風機による事故は、2022年までの5年間で少なくとも45件報告されているそうです。手持ち扇風機の普及にともない、事故件数も右肩上がりに上昇しています。具体的には、以下のような事例が報告されています。
- 充電中に発火・焼損した
- 使用中に突然、火花と白煙が上がった
- 異常発熱が起き、突然出火した
(参考)製品評価技術基盤機構(NITE)
事故が発生するのは「充電中」が多いそうですが、NITEでは、「日射が当たる場所に長時間放置した」「地面の落とした」「海や川に水没させた」といった事象の後も、手持ち扇風機の発火や破裂が起きやすいと注意喚起しています。
2.手持ち扇風機が爆発・発火する原因
では、なぜ携帯扇風機による発火や破裂事故が発生するのでしょうか。その原因は主に、携帯扇風機に内蔵(又は装着)された「リチウムイオンバッテリー」にあるとされています。
現在市販されている携帯扇風機には、リチウムイオンバッテリーが使用されている商品が多くみられます。このリチウムイオンバッテリーが次のような状態になったことが事故につながる可能性があると考えられます。
直射日光が当たる場所に放置
一般的に、リチウムイオンバッテリーの最高許容周囲温度は「45℃」に規定されています。この温度を超える環境に放置すると、電池が劣化したり安全装置が故障したりして、発火や爆発が起きやすくなります。
たとえば、砂浜や川岸などの直射日光が当たる場所に放置したり、車のダッシュボードに放置したりすると、携帯扇風機のバッテリー内が45℃を超えて、異常な動作を起こす可能性が高まります。街中であっても、首からぶら下げて直射日光の当たる道を長時間歩いているリチウムイオンバッテリーの異常につながる可能性があるので、十分な注意が必要です。
落下の衝撃
外出時に、携帯扇風機を片手に持って歩いているときなど、誤って落とすことがあるかもしれません。どこかに強くぶつけることもあるでしょう。このように、携帯扇風機に強い衝撃を与えると、リチウムイオンバッテリーが損傷する可能性があります。 この状態で使用を続けると、バッテリー内部でショートを起こし、発煙や発火、破裂につながる危険があります。
この状態で使用を続けると、バッテリー内部でショートを起こし、発煙や発火、破裂につながる危険が高まります。
水没
リチウムイオンバッテリーは、水に弱い製品です。海や川などに水没させたり、大雨に降られたり、飲み物をこぼしたりして手持ち扇風機が濡れると、バッテリーがショートして発火や爆発する可能性があります。
水に濡れたら、完全に乾くまで使用しないように注意しましょう。
充電中の発火
充電中に、リチウムイオンバッテリーが異常に熱くなったり、充電が行われないまたは突然電源が切れたりしたときは、バッテリーに何らかの異常が発生していることが考えられます。リチウムイオンバッテリーを確認し、膨張や変形が見られたら、直ちに充電をやめましょう。
また、就寝時に充電される方も多いと思いますが、近くに燃えやすいものがあるとリチウムイオンバッテリーの発熱や発火で燃え移り、火事になる危険があります。充電時には「近くに物を置かない」「就寝中を避ける」などの注意も大切です。
3.発火や破裂を防ぐにはどうしたら良い?
手持ち扇風機による事故を防ぐには、発火や破裂の原因を把握したうえで、正しい使用法を守ることが大切です。具体的には、以下の注意点を守りましょう。
(1)直射日光が当たる場所や高温環境に放置しない
(2)落とすなど物理的衝撃が加わった場合、水にぬれた場合などは使用を控える
(3)事故の予兆を見逃さない
それぞれ、詳しく説明します。
(1)直射日光が当たる場所や高温環境に放置しない
リチウムイオンバッテリーの許容周囲温度を超えるおそれがある場所に、手持ち扇風機を長時間放置しないよう管理することが大切です。
外出時に使用する場合は、なるべく日陰で使用しましょう。炎天下で携帯扇風機を使用しても、猛暑日など気温が高い場合には体温より高い風を送るようなもので暑さ対策、熱中症対策効果も期待できないものです。携帯扇風機は、日陰や室内で使用するのが適切です。
(2)落とすなど物理的衝撃が加わった場合、水にぬれた場合などは使用を控える
携帯扇風機を硬い地面に落とすなど、物理的衝撃が加わった場合にはいったん使用を止め、凹みや傷がないかをチェックしましょう。凹みや傷がある場合は、リチウムイオンバッテリーの変形や破損も考えられるので、使用しないことをおすすめします(廃棄方法は「<参考>携帯扇風機の廃棄方法」に記述しています)。
また、水没させた場合、水や液体で濡らした場合には完全に乾くまで使用を控えましょう。
(3)事故の予兆を見逃さない
リチウムイオンバッテリーが発火や破裂する前は、バッテリーが膨らんだり焦げ臭い匂いがしたりと、何らかの兆候を示すことがあります。こうした予兆を使用中だけでなく、充電中でも感じたら、直ちに使用をやめてください。
就寝中に充電すると、こうした異常の発見が遅れ、気がついたら火災になっていることも考えられます。就寝中の充電は控えるとともに、周りに燃えやすいものを置かように注意しましょう。
4.事故を未然に防ぐ!手持ち扇風機の選び方
手持ち扇風機は、国産・海外製を問わずさまざまな商品が販売されていますが、事故を未然に防ぐには「信頼性の高い商品を選ぶ」ことも重要なポイントです。
すべてではありませんが、ネットショップなどで販売している安価な手持ち扇風機のなかには、メーカーや輸入事業者、販売元などの情報が不明瞭な商品もあります。こうした商品には、安全性を軽視したものも散見されます。事実、NITEの調査では事故原因の多くが「製品自体の不具合」にあると報告しています。
また、万一事故が起こった場合に、メーカーや販売元などがわからないとリコールや損害賠償などの措置ができません。手持ち扇風機を選ぶときは、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが大切です。
海外製の商品のなかには、「PSEマーク」が表示されていないものもあるようです。PSEマークとは、電気用品安全法の基準を満たすモバイルバッテリーなどにつけられるもので、このマークや届出事業者の名称のない製品は、国内では販売が禁止されています。ネット上では、PSEマークのない商品が販売されているケースも少なからずあるようです。購入時に、しっかり確認しましょう。
PSEマーク※
※リチウムイオン電池には、PSEマークに加えて、製造事業者等の名称(略称、登録商標を含む)、定格電圧、定格消費電力等が表示されます
5.もし発火や破裂してしまった場合どうしたら良い?
手持ち扇風機が発火や爆発をした際には、直ちに使用をやめてください。やけどなど負傷したときは、すぐに治療しましょう。
手持ち扇風機の発火が周りの可燃物に燃え広がったときは、直ちに初期消火を実施します。119番への通報も大事ですが、消防車が現場に到着するまでに数分はかかりますから、火が小さいうちに可能限り自力でできる消火活動を行い、延焼を防ぎましょう。
こうした非常時に備えて、誰もが使えるような簡易消火具を設置しておくと安心です。一般的な消火器だと、不慣れな方には十分に消火できないこともありますし、粉や泡などの消火剤がまき散らされて後始末が大変です。
ワイピーシステムでは、電気火災にも対応した簡易消火具「消棒Rescue®」を提供しています。消火剤に二酸化炭素を使っており、周囲を汚すことがなく後始末も容易です。消火器よりコンパクトなサイズで消防法にも準拠した商品ですから、安心してお使いいただけます。
6.まとめ
手持ち扇風機は、誤った使用法をすると発火や爆発といったリスクがあります。万一事故が起きたときは、すぐに使用を中止し、適切な対処を行えるように備えることも大切です。 また、事故を未然に防ぐためには、信頼できる商品選びも重要です。メーカーや販売元などがわからない商品は避け、信頼性の高いものを選ぶようにしましょう。
<参考>携帯扇風機の廃棄方法
家庭用ごみでは、電池は一般廃棄物に分類されます。リチウムイオン電池をプラスチックごみとして不燃ごみに出すことはできません。誤って不燃ごみに出すとごみ収集車やごみ処理場の火災につながることもあります。家電量販店やホームセンター、市役所、大型のスーパー等に設置してある、リチウムイオン電池のリサイクルボックスに持ち込みましょう。再生資源化製品のリサイクルを推進している一般社団法人JBRCのホームページから、リチウムイオン電池を回収している店舗や自治体を検索できます。近所に回収場所が見つからない場合は、ホームページを活用して回収場所を検索してみましょう。 ※ JBRCの『協力店・協力自治体』検索はこちら携帯扇風機でバッテリー部分が取り外しできるものは、バッテリー部分を、取り外しできない製品の場合には、そのままの状態で上記の方法にしたがって廃棄してください。